既に始まっている『東京劣化』

 人口減少学の権威である松谷明彦政策研究大学院大学教授は、東京都の隆盛はオリンピック後に陰り始め、2030年頃には鳥取・島根圏を下回ると予言しています(松谷明彦『東京劣化』PHP研究所)。これは高齢化が急速に進むことで、東京圏の一人当たり経済成長率が急速に落ち込むと見込まれることから言われています。しかし、東京の劣化は既に始まっていると考えられるデータがあります。
 日本政策金融公庫が毎年行っている創業者アンケートのデータでは、創業者の平均年齢は40歳前後に集中し、安定していることがわかります。ここから35〜44歳の年齢層を創業の中核層と定義して国勢調査の人口の動きを見ると、興味深いことがわかります。日本全体で創業の中核層の人口は、1985年頃まで増加していたものが、1990年から減少に転じています。1990年頃と言えば、開業率が廃業率を下回り、開廃業率の逆転が生じた頃です。以後、日本の開業率は廃業率を下回り続けています(注:2005年、2010年は団塊ジュニアがこの年齢層に達したためやや増えましたが、2015年には減少に転じました。以後は減少傾向が続く見込みです)。企業活動の活性度を見るうえで、創業の中核層の人口を見ることは有効です。
 東京都の創業の中核層の動きは特殊です。1985年をピークとして以後、減少したところは全国と同じ動きです。ところが1995年に底を打って上昇に転じると2010年には221万人と過去最高を記録しました。1995年比で69万人、45%増と異常な盛り上がりです。これは東京都への若者の転入の影響が大きいでしょう。ところがこの人口は2010年に頭打ちとなり、2015年には2万4千人減少しました。1995〜2010年の異常な盛り上がりは人口流入の影響が大きかったわけですが、それが2015年には陰っているのです。若者人口が減少していますから、今後は減少傾向で推移するでしょう。
 2020年のオリンピックまでは勢いがあるように見えるでしょうが、東京は既にピークアウトしているという認識を、地方の大人たちは子供たちに伝えるべきでしょう。