東京の人口バブル崩壊の兆し

 総務省の統計(住民基本台帳人口移動報告)で、2016年の東京都の人口転入超過が7万4,177人となり、20年連続の転入超過で東京一極集中が進んでいると朝日新聞で報じられました。東京一極集中に歯止めがかからないというストーリーで語られていますが、その陰で東京の人口バブル崩壊の足音が近づいていることにまでは触れられていません。
 転入超過数は前年比で7,519人減っており、5年ぶりの減少となったと報道では指摘されています。東京オリンピックを2020年に控えながら、その直前で転入超過が減少している点は注目に値します。減少理由として考えられる一つ目は、転入の勢いの鈍化です。転入数は前年よりも12,640人減少しました。少子化で若者人口が減少していますから、流入する若者も減少するでしょう。東京都の人口増加がインフラの許容限度に近づきつつあり、転入することの満足度が低下していることも考えられます。
 今後は、転出数が勢いを増す可能性が大きくなるでしょう。大都会と呼ばれる東京も今や高齢者人口は300万人を超え、ダントツで全国一です。都会だから高齢者が暮らしやすいといえるわけではありません。田舎でのんびり余生を送りたいというお年寄りもたくさんいるはずです。合計特殊出生率が全国一低いことからは、子育て環境がよくないと推測されますから、子供をもつ女性の転出意欲も高まるでしょう。
 人口減少学の権威である松谷明彦政策研究大学院大学教授は、2030年以降には東京の劣化が地方に比べて顕著になると予言しています(『東京劣化』PHP研究所)。その兆しがそろそろ人の動きにも表れ出したといえるでしょう。