破壊的成長よりも創造的衰退

 徳島県神山町における国際交流とIT化での活性化事例は、貴重な示唆に富んでいます。時流であるグローバル化とIT化をうまく取り込みながら、まちの新しいあり方を模索しているからです。
 ここで重要なのは、まちを再び成長軌道に乗せようという大それたことは考えていない点です。過疎の流れは止められないとしたうえで、何とかして生活しやすい状況をつくり出そうとしています。
 衰退軌道にあることを素直に受け止めたうえで、その痛みをやわらげようと創造性を発揮する。そんな試みは、創造的衰退と呼ぶべきであり、これからの指針になるものです。
 世界的な人口過剰状態の今、我が国において人口増加を望むことは相当にリスキーです。むしろ人口減少を基準にして、生きやすい社会をつくっていくことを目指すべきではないか。そうした方向で価値観を再構築する必要があるのではないか。
 こうしたパラダイムチェンジを行うことで、連携・協力・助け合いの文化が復活します。限りある資源はシェアしなければ足りなくなるからです。不足する資源を奪い合うのではなく、分かち合う。それにはお互いの力を合わせる必要があります。
 激烈な競争から緩やかな協調へと人間関係のあり方をシフトさせるものが創造的衰退という考え方だと思います(参考文献:篠原匡『神山プロジェクト』日経BP社)。