人に仕事を合わせる(岐阜県中津川市)

 高齢者雇用を進めることは、言うほど簡単ではありません。高齢者は若者に比べて体力や視力、記憶力が低くなっており、ミスも出やすくなっています。何度教えても覚えられないということもあります。こうした問題を(株)加藤製作所は、人に仕事を合わせる発想で解決しました(加藤景司『意欲のある人、求めます。ただし60歳以上』PHP研究所)。
 シニア社員の体力に配慮して、夏は暑く、冬は寒い工場内の環境を改善するため、小型の冷風機を作業場ごとに設置したり、天井に暖房器具を取り付けたりしました。半自動の箱詰め機や接着剤を塗るロボットも導入しました。水没式の漏れ検査装置には、温水を循環させるポンプ槽を取り付け、冬場の作業が楽になるようにしました。
 視力の弱さを助けるため、照明器具を明るいものにして作業台の周りの照度を3倍近くに上げました。記憶力を助けるため、鉄板に刻むネジ穴の溝の数を音で知らせてくれるブザーを取り付けました。
 基本動作を覚えてもらうために、指示されたとおりできるようになること、勝手な判断はせずにわからないときは必ず聞くこと、トラブルがあったときは「止める、呼ぶ、待つ」の順番で上司の指示を仰ぐことを繰り返し指導しました。標準作業表(写真・図解、注意点入り)をもとに、できているかどうかをチェックしました。
 頭だけでなく体で覚えてもらうために、材料への手の添え方、金づちの打ち方などを、手を取って、介添えしながら感覚をつかませました。
 シルバー社員も、帰宅してから自分で業務日誌をつけて、自分が行ったことをすべて記録し、覚えるように努めたりしました。こうして専門用語なども覚えていきました。
 仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせる。この発想がシルバー社員活用の鍵だと思います。