世界最小の歯車を作る豊橋の小企業

 2002年に100万分の1グラムのプラスチック歯車を開発してギネスブックに載った小企業が豊橋市にあります。(株)樹研工業です。1965年に同社を設立した松浦元男社長は、21世紀の技術は、マイクロ化が一つの潮流になると予見して、80年代からマイクロ加工に挑戦してきました(松浦元男『先着順採用、会議自由参加で「世界一の小企業」をつくった』講談社)より)。「刃物で加工できる世界最小のパーツをつくろう」を合言葉に邁進してきた同社の技術は、世界最高水準に到達しました。松浦社長がパウダーパーツと呼ぶ直径0.149mmの歯車は肉眼では見えない大きさです。
 パウダーパーツ開発チームのチーフ河合さんは高卒です。そり込み眉なしピアス付きで改造バイクに乗っていた河合さんは、同社に入社して15年で世界一の技術者になりました。国際見本市では英語で外国人に製品説明を行います。
 「採用は無試験、先着順。国籍、性別、学歴は問わない」方針の同社では、さまざまな従業員が働いています。市内の短大の卒業生、田舎の高校の中退者、工業高校電気科の卒業生、中国人女性、韓国人女性などが母国語以外の言語で海外の企業と商談しています。
 「定年制なし」「経営会議は社員が自由参加」といった仕組みも社員のモチベーションを高めています。
 「この町の青年を一人でも多く、立派な社会人にしてお返しすることがライフワーク。企業経営は手段にすぎません」という松浦社長。若者の可能性を信じるその姿勢は、多くの経営者が見習わなければならないものでしょう。