デザインの力で蘇った陶磁器の原型メーカー(瀬戸市)

 デザインの力が小企業を救った事例が、(有)セメントプロデュースデザインの社長である金谷勉さんの著作で紹介されています(金谷勉『小さな企業が生き残る』日経BP社)。その中に、瀬戸市の小企業の例があります。
 瀬戸市にある(株)エム・エム・ヨシハシでは、一般的な凹凸のない皿をパスタ皿として売り出そうとしていましたが、他社との差別化ができず、困っていました。同社は、高い手彫りの技術で干支の置物なども作っていましたが、陶磁器業界では、窯元は表面に凹凸があることを嫌い、型作りにおいても模様を彫ることはほとんどありません。そのため、型屋を営んでいた同社は、手彫りの技術を活かす場がありませんでした。この技術が大きなセールスポイントになると見抜いた金谷さんのアドバイスにより、同社は、木の幹のような表面に仕上げたマグカップや、手編みのセーターを思わせる模様を表面に彫り込んだ陶器の湯飲み茶わんを製作し、売り出しました。
 模様を彫り込んだこれらの商品は「今まで見たこともない」と評判を呼び、2012年にテレビ番組「ガイアの夜明け」でも紹介されたことで、一気に知名度が上がりました。同社は、「HORITSUKE」「AND C」「CEMENT × M.M.Yoshihashi」というブランドを展開し、凹凸のないパスタ皿もブランド商品群に組み込んで幅広く展開するまでに成長しています。
 高い技術力をデザインの力で見える化し、陶磁器業界の新たな可能性を拓いた、すばらしい事例です。