『デフレの正体』で読み解ける開業率の低迷要因

 ベストセラー『デフレの正体』(藻谷浩介著)では、日本を覆う深刻なデフレの原因が、少子高齢化による人口構造の変化であることが明らかにされています。この視点は重要です。開業率の低迷も人口構造の変化で説明できるからです。
 日本の開業率は、90年代以降、廃業率を下回る水準で推移しています。この要因については成長市場の減少や、自営業者の相対所得の低下、若者の起業意欲の低下など、いろいろと指摘されてきましたが、決定的といえるものはありませんでした。これを人口構造の変化から見てみると面白いことがわかります。
 日本政策金融公庫新規開業実態調査では、創業者の平均年齢は約40歳です。ここから35〜44歳を創業の中核層と定義してその人口の推移を見ると、90年まで伸びていたものが、少子化の影響で90年を過ぎると低下傾向に転じています。つまり創業の中核を担う人口は、90年以降、低迷しているのです。創業者を生み出す母集団の数が減れば、創業が減るのも当然です。当たり前な答えですが、これが正解でしょう。
 ここから、創業支援のあり方は、ミドル世代の男性層をターゲットにするのではなく、女性やシニアを対象とすべきとの方針が導かれます。女性やシニアが活発に創業する社会を作ることが、これからの日本に必要だと思います。