フードテックで食物アレルギー事故の防止に取組む女性起業家

 コロナ禍が収束に向かい、外食産業も勢いを取り戻す中で、あらためて心配の種になっているのが食物アレルギーの問題です。顧客がアレルゲンを含む食べ物を飲食して事故に見舞われることに外食産業でも頭を悩ませています。飲食物を提供する側はかなりの注意を強いられますが、完全には防ぎきれていません。

 外食産業のアレルギー対応という難問に対して、フードテックを使えば解決できると挑戦する女性起業家が(株)CAN EAT(東京都)の社長、田ケ原絵里さんです(日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』No.182 P42-45「食事制限があっても食を楽しめるように」)。

 田ケ原さんは、家族が米アレルギーに罹患して外食を楽しみにくくなったことから、アレルギーのある人でも気兼ねなく食事を楽しめるようにしたいと思い、2019年に(株)CAN EATを立ち上げました。

 外食産業に提供する同社の主力サービスは2つあります。「アレルギー管理サービス」と「アレルギーヒアリングシステム」です。前者は、加工食品や調味料の原材料ラベルをスマホで撮影するとアレルゲンを表示し、メニューごとのアレルギー表を作成できるアプリです。後者は、消費者が自身の食事制限の情報をウェブサイトに登録して店と共有できるサービスで、2022年3月に利用者が6,000人を超えました。結婚式場や、観光地の旅館、ホテルでの利用が増えています。

 アレルギー対応で手応えをつかんだ田ケ原さんは、ベジタリアンヴィーガン、宗教上や健康上の理由など、アレルギー以外で食事制限のある人にも対象を広げ、「食のパーソナライゼーション」(顧客ごとの最適化)を実現することを目指しています。誰もが気兼ねなく外食できる社会を創りたいという想いと行動が、住みよい社会を実現する日が来ることを期待しています。