スタートアップ大国となるカギは日本公庫の高校生ビジコン

 我が国がスタートアップ大国になる日が近づいている予感がします。

 政府は昨年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を策定した際、目標として、スタートアップへの投資額(2021年8,200億円)を2027年度に10兆円に拡大することを掲げました。将来的にはユニコーン100社、スタートアップ10万社を創出して我が国を世界有数のスタートアップの集積地とすることを目指しています。

 シリコンバレーのようなスタートアップ集積地を目指すには、スタートアップが次々と生まれる生態系、いわゆるスタートアップ・エコシステムを創り出す必要があります。政府はスタートアップ・エコシステム拠点都市を定めて、支援体制を整備しています。

 スタートアップ支援で特に重要なのは人、つまり起業家を育成する体制の整備です。小中高生向けに起業のマインドとノウハウを教える取組みは、20年以上前に民間で始まり、その後、高校の授業に取り入れられ、今では小中学校にも広がっています。その成果が表れているのが、学生ビジコンの応募数の推移です。

 国内最大級の高校生ビジコンは、日本政策金融公庫が行う「高校生ビジネスプラン・グランプリ」です。2013年度から行われており、今年度までに累計32,769件のビジネスプランの応募がありました。第1回の1,546件から毎年応募が増え続け、今年度は5,014件と3倍以上に増えています。我が国の起業家教育が、若者たちに着実に浸透していることがうかがえる数字です。

 これだけ多くのビジネスプランが寄せられる大会からは、実際に起業して成功する方も生まれています。スキマバイトアプリを提供する(株)タイミー小川嶺代表取締役CEOは、2015年度大会にチャンレンジした経験を活かして2017年に会社を立ち上げて急成長させ、スタートアップとして知られるようになりました。

 誕生する時期も、場所も、秘めた可能性も不確定なスタートアップへの支援は、裾野広く、息長く取り組まないと成果は出せません。全国いたるところで70年以上にわたり創業者への融資を行ってきた日本政策金融公庫は、スタートアップ支援において成果を出せる稀有な存在です。公庫のビジコンがスタートアップ・エコシステムの基盤となって多くのスタートアップを生み出し、我が国がスタートアップ大国となる日が楽しみです。