SDGsな社会づくりのために完全菜食主義者を支援

 持続可能な社会づくりを目指す企業は、その活動も自ずと持続可能になる。そんな教訓を与えてくれる企業が、神戸市でヴィーガンを支援する(株)ブイクックです(日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』No.180 P16-19「ヴィーガン生活のインフラをつくる」)。

 ヴィーガン(完全菜食主義者)とは、ベジタリアン菜食主義者)よりも徹底して、卵や乳製品などの動物性食品も食べない人たちのことです。そうした人たちを支援したいと学生時代に起業したのが工藤柊さんです。2020年に神戸市で(株)ブイクックを立ち上げ、ヴィーガン料理のレシピサイト、ヴィーガン食材のネットスーパー、ヴィーガン総菜の宅配を行っています。

 工藤さんは、高校3年生の時に、交通事故で亡くなった猫を見てショックを受け、いろいろと調べるうちに、多くの猫が殺処分されていること、それ以上に多くの豚や牛が食用に殺されていることを知りました。人間が多くの動物の命を奪い、環境に負荷をかけていることに問題意識を持ち、ヴィーガン生活を始めました。

 大学入学後は、学食にヴィーガンメニューを導入する活動を始めましたが、一人で行うことに限界を感じました。そこで、クラウドファンディングで資金を集め、各地を回って賛同者を集めました。2018年にNPO法人を立ち上げ、料理教室などのイベントの開催や、ヴィーガンのコミュニティづくりを始めました。その活動の中で、レシピ投稿サイトを開発したことが、(株)ブイクックを立ち上げるきっかけになりました。

 同社を創業した2020年は、東京オリンピックの開催が予定されていたため、インバウンド需要を取り込むつもりでしたが、コロナ禍で延期となったため、国内に住むヴィーガンにターゲットを絞ることにしました。知人が経営するIT企業でプロダクト開発を学び、各地の賛同者からアドバイスをもらって、組織体制を固めていきました。

 2021年に開始したブイクックスーパーは、モール型のECサイトでしたが、店舗ごとに送料がかかることが利用者の不満を生んだため、2022年に同社が窓口となって利用者に販売する小売型ECに切り換えました。総菜を宅配するブイクックデリは、2021年に開始したものの体制が整わないとみて1年で休止しました。その後、ブイクックスーパーの売上が伸びてベンチャーキャピタルから資金調達ができるようになり2023年に再開しました。

 同社の企業活動は、環境や状況の変化をよく見ながら、それに適応するよう自社を変化させることで着実に成長の年輪を刻んでいます。動物や環境に負荷をかけないSDGsな社会の実現を目指す企業活動は、多くの支援者を増やしながら、確実に広がっています。