DXで遠隔地スタッフの雇用創出とスキル向上を実現(by中小企業白書)

 DXで事業の拡大に成功したサービス業の事例です(2021年版中小企業白書Ⅱ-200事例2-2-6)。

 集合住宅の共用部の清掃を行う(株)お掃除でつくるやさしい未来(福岡県春日市)は、2013年のクラウドサービス導入から5年間で、営業エリアの市区町村数が11倍、清掃契約棟数が7倍、雇用者数が3倍に伸び、東北、関東、近畿、九州の7府県に展開する目覚ましい成長を遂げました。スタッフの9割以上を短時間雇用で契約する子育て世代の女性が占めています。

 クラウドサービス導入のきっかけは、本社から車で2時間ほど離れた場所からの大口注文が入り、現場付近在住の新規スタッフを採用することになったことです。直接コミュニケーションが取れないために、本社スタッフと同じモチベーションで働いてもらえるか、清掃サービスの品質を維持できるかが心配されました。そこで前田雅史社長は、県の「テレワーク導入支援事業」を活用して既製のクラウド型コミュニケーションツール(kintone)を導入しました。簡単にカスタマイズできる一般的なものです。社内限定の電子掲示板やチャット、メールなどの機能を使い、本社と遠隔地のスタッフが円滑に意思疎通できる仕組みを構築し、遠隔地のスタッフの清掃品質の確保とモチベーションの向上を図ることができました。

 事業が拡大し、勤怠や経費など管理業務が増えたため、クラウド型の業務改善グループウェアも導入しました。最も効果が大きかったのは作業報告です。アクセス権限などのカスタマイズにより社外の人も利用できます。スタッフがスマートフォンで清掃完了の操作を行うと、顧客に完了のメッセージが届き、記載されたURLをタップするとグループウェアを通じて詳細な報告を確認できる仕組みとなっています。「不審物があったので管理人さんに預けました」と写真とともに報告があれば、顧客は「○○さん、丁寧な仕事ありがとう!」と返事のコメントを入れる、というふうに使えます。クラウドに蓄積される報告書は12万件を超え、スタッフが閲覧・検索して活用するノウハウの宝庫となっています。

 DXがコミュニケーションの質と量を高めて事業を拡大させた良好事例です。ぜひ多くのサービス業の方に参考にしていただきたいと思います。