コロナ禍をファクトフルネスしてみる

 ファクトフルネス(事実に基づく世界の見方)で新型コロナウィルス感染症(以下、感染症)についての誤解を考えてみましょう。数字は12月12日時点です。

 【分断本能による誤解】感染者と死亡者の数がマスコミで毎日発表され、感染者が差別されています。しかし国内の累計感染者数は178,283人(人口比0.1%)、死亡者数は2,581人(同0.002%。昨年の死亡者数比で0.19%)です。感染者を差別することは行き過ぎです。

 【ネガティブ本能による誤解】各地でクラスターが発生したり、重症者が増えていたりすることから、感染の拡大による医療崩壊が懸念されています。他方、国内の病床数は世界一であり、マスク・手洗い・ソーシャルディスタンスや3密回避などで様々な防止策が取られ、ワクチンの開発も進んでいます。

 【直線本能による誤解】感染の波が最近になるほど大きくなっていることから、感染が一方的に拡大すると思いがちです。実際には増減の波を繰り返しています。様々な対策が効いており、今の第三波もいずれ減少に向かいます。

 【恐怖本能による誤解】重症化し死者も出ることで、感染症が恐ろしいものと思われています。しかし実際に重症化して死亡する割合は少なく(入院患者の2.5%)、死亡者の平均年齢は79歳です。60歳未満の人や健常者が恐れるべきものではありません。

 【過大視本能による誤解】現在感染者数が26,783人と過去最高を記録したことから、最悪な状況にあると思われています。しかしこれには検査数が増えて判明した分も含まれていますし、8割以上が軽症か無症状です。

 【パターン化本能による誤解】世界的に流行しているため、有名なスペイン風邪(5億人感染、5,000万人死亡)と比べられますが、世界の累計感染者数は0.7億人、死亡者数は160万人で、スペイン風邪には遠く及びません。

 【宿命本能による誤解】大都市に人口が集中する今の日本では3密は避けられず、感染症も避けられないと思いがちです。しかし東京からの転出が転入を上回り、テレワークが普及し、ソーシャルディスタンスが定着し、社会が少しずつ変わり始めています。

 【単純化本能による誤解】感染症は検査・隔離・治療の徹底で解決できると思われがちです。実際には、個々人の防止策の徹底、ワクチンによる集団免疫の獲得、ウィルス増殖抑止薬・免疫抑制剤による治療など各種対策の総力戦で解決に向かいます。

 【犯人捜し本能による誤解】中国、入国者、夜の街が危ないと責めがちです。しかし感染症は様々な経路から生じます。落ち着いて、日々の暮らし方に注意することが必要ですし、感染源を責めない「罪を憎んで人を憎まず」が大事です。

 【焦り本能による誤解】早く社会や経済を元に戻したいという思いから、感染終息を急ぎたくなります。しかし焦るあまり、中途半端な経済振興策やワクチンに頼ることは逆に終息までを長引かせます。

 アフターコロナは以前の生活には戻らないと頭を切り替えて、ニューノーマル(新しい生活様式)を模索することが必要です。SDGsを目指し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めて新たな絆に基づく社会を創ることが求められています。