事業承継を加速させるパラダイムチェンジ

 全国で事業承継支援の重要性が叫ばれ、多くの支援機関が取り組んでいます。ですが、それによって事業承継が進み、企業数の減少に歯止めができているかというと、まだそれほどでもないようです。
 事業承継支援は、狭義に捉えて取り組むと大変な労力がかかります。相続問題を中心に様々な権利関係を調整しながら、承継する側とされる側の合意形成が必要になるからです。うまくいっている企業では、現状の経営方針を変える必要はなく、親族や従業員が内部から積極的に承継に取り組みますから、事業承継は大きな問題になりません。
 問題となる事業承継は、経営が下り坂にあり、大きな債務を背負っているケースや、経営のやり方を変えないといけないケースです。これらの場合、そのまま引き継ぐことはリスクが大きいため、承継がスムーズにはいきません。承継する部分としない部分の分別で意見が分かれるからです。この問題を解決するには、パラダイム(考え方の枠組み)を変える必要があるでしょう。
 一つの考え方として提案したいソリューションですが、承継において、現経営者の意向をすべて尊重することが無理な場合、いったん廃業して残ったものを創業予定者に選択的に引き継いでもらう。廃業+創業という段取りで事業承継を行う。これにより、権利関係の調整コストを大きく減らすことができ、広義の事業承継がスムーズに進みます。
 事業承継を、事業のすべてを引き継ぐものと考えると、がんじがらめになり、身動きが取れなくなります。しかし引き受ける側が、ブランド、技術、商品、取引先、従業員、設備、その他の資産などから、承継するものを選ぶことができれば、承継は楽になります。
 事業が何らかの形で存続すればよいと関係者が思い切れれば、事業承継は加速するでしょう。