誤解のないようにしたい生産性の議論

 政府が作成した「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015改訂版)」平成27年12月24日閣議決定)では、「生産性の向上」という言葉が繰り返し用いられています。人口減少時代でも経済成長を維持するために生産性の向上が不可欠との認識からですが、誤解のないように注意が必要です。
 高めるべき生産性は労働生産性であって、労働者一人一人の稼ぐ力を高めることです。これを企業の生産性を高めることと捉えてしまうと、人員削減して従業者一人当たりの利益を高めようという方向に動いてしまいます。
 生産性の議論は、農業における生産効率(投入量と産出量の比率)から出発し、工業・サービス業へと広がるにつれて従業者一人当たり付加価値額へと拡張されました。そのため、従業者を削減することが生産性向上策であるように誤解される弊害が生じました。
 大切なのは、イノベーションや経営上のさまざまな工夫を生かして付加価値を高めることです。そのためにIT投資や人材育成が必要とされます。まちづくりと企業経営をリンクさせることも重要です。
 労働者の稼ぐ力を高めることを目標にして、女性や高齢者の活用を図っていく。このイメージをもって地域の生産性を向上させることが求められています。