合意形成は共感づくり(北海道富良野市)

 富良野市の複合商業施設フラノマルシェは、民によるまちづくりの良好事例ですが、プロジェクトの実現には、当然ながら苦難がありました。「市民コンセンサスの形成」というお決まりの問題が立ちはだかったのです(西本伸顕『フラノマルシェの奇跡』学芸出版社)。
 フラノマルシェ立ち上げのキーマンであった西本氏(野菜商社の社長)は、辻説法こそコンセンサス形成の近道と、市、議会、商店街、商工会議所、中小企業家同友会、農協、物産公社、建設業協会、料飲店組合、地権者ら関係者を説得に回りました。パナソニックバーチャルリアリティーシステムで作った3Dのまちづくり完成図をパソコンで見せながら「まちなかのにぎわいの復活」「まちなか居住人口の拡大」というビジョンを関係者たちに熱く語りました。
 西本氏の情熱あふれる言葉は、関係者たちに「良いまちをつくるために俺も(私も)参加したい」という共同体意識を呼び覚ましました。その結果、まちづくり構想の第一段階であるフラノマルシェが実現しました。コンセンサス形成とは「共感づくり」だと、西本氏は言います。人間関係の希薄化とともに聞く機会も失われつつある共感という言葉。それがいかに大切なものであるかを、フラノマルシェの事例は教えてくれます。