経済を成長させるには新しい事業が数多く生まれる必要があるので創業支援が重要、とこれまで言われてきました。しかし、創業支援だけを行っても、地域を支えるような事業が容易に生まれてこないことは、多くの支援機関関係者の知るところです。ここには大きな盲点が潜んでいるのではないでしょうか。
創業支援は、新しいアイデアを形にしたいという希望者に対して、経営ノウハウや資金、時には販売先情報まで提供して創業をバックアップすることです。最近では「伴走型支援」という形で、創業後も軌道に乗るまでフォローする態勢もできています。しかし、それだけではなかなか創業は軌道に乗らないですし、地域における波及効果(創業が創業を呼び、地域が活性化する状態)も出てこないでしょう。成功確率を高める仕掛けが不足しているからです。
創業者が始めようとしている事業が地域のニーズに即していると広く知られなければ、提供する商品やサービスが売れ続けることはありません。出たとこ勝負では、成功確率は低いままです。地域経済・社会が縮小に向かう今、地域のこれからのあり方とつながる事業でなければ、生き残ることは難しいのです。その意味で、まちづくりの方向性とシンクロすることが、これからの企業経営には求められます。
今、地方創生の名の下で、各地域が、まち・ひと・しごと創生に力を入れています。これは、まちづくりのビジョンを示し、それに合った人材を育成し、働く場を用意するという三層構造の支援態勢を敷いて、効果的にまちづくりを行おうというものです。この考え方は正しいと思います。まずビジョンで人々の意識を統一し、次に人材育成により有能な人を輩出し、最後に働く場を用意して、存分に活躍してもらう。これにより、期待成長率の高まりを現実の成長率の高まりへとつなげ、経済の好循環を生み出すことができます。
これからは創業支援を超えるまちづくり支援が求められるというように、常識を変えていくことが必要でしょう。