世界一きれいな熱処理工場(愛知県安城市)

 質は目に見えません。そのため自社製品の質にどれほど自信があっても、お客様に理解していただくのは至難の業です。この難題に挑戦したのが、愛知県安城市菱輝技術センター(株)です(日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』6月号)。
 同社は、企業から注文を受けて金型の熱処理を行います。洗浄から熱処理までの全工程を真空状態で行うことで、熱が均等に行き届き、寸法や高度のばらつきや歪みがない処理を行えます。この技術には自信がありましたが、どれほど優れているかは見てもわかりません。
 熱処理技術の優位性をどうしたらアピールできるか。同社が到達したソリューションは、世界一きれいな熱処理工場をアピールして、品質管理が優れていることを理解していただこうというものでした。熱処理工場は、作業に大量の水や油を使うため、機械から飛び散る水や油で床や壁が汚れます。きつい、汚い、危険の3K職場とも呼ばれます。このイメージを覆すことで、品質管理の技術の高さを示そうというのです。
 同社は、きれいな工場を維持するための管理体制を敷きました。掃除専門スタッフを配置し、従業員同士で毎日、整理整頓のチェックを行い、部屋や設備すべてに管理責任者を決めて毎週点検し、目の届かない場所は3ヵ月に1度社内全体で掃除するなど、徹底したのです。きれいな工場を見ていただくため、展望式見学ルームも設置しました。
 頭抜けた清潔さで熱処理技術の高さを示す同社の挑戦は、上場企業から個人企業まで1,000社を超える取引先を引きつけ、さらに数を増やしています。多くの小企業の励みになる事例です。