偶然を味方につける処世術エフェクチュエーション

 予測不能の時代をどう生き抜けばよいのか。誰もが悩むところですが、1つのポイントは、偶然を味方につけることでしょう。予測不能ということは、物事が必然的に動いていかず、偶然に左右されることが多いということです。であれば、偶然を味方につけるしかありません。しかし、偶然は偶発的なものですから、どうすれば味方につくのかわかりません。そうした事態に対処するために考え出されたのがエフェクチュエーションです(吉田満梨・中村龍太『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』ダイヤモンド社)。

 エフェクチュエーションは、ヴァージニア大学ダーデンスクールのサラス・サラスバシー教授が提唱する「熟達した起業家に対する意思決定実験から発見された、高い不確実性に対して予測ではなくコントロールによって対処する思考様式」です。優れた起業家は、不確実な事態に対して共通の思考様式で対処していたとするもので、その思考様式を5つの原則で表現しています。それらは「手中の鳥の原則」「許容可能な損失の原則」「レモネードの原則」「クレイジーキルトの原則」「飛行機のパイロットの原則」と呼ばれます。

 エフェクチュエーションは、偶然性が強い世界での振る舞い方の指針を与えてくれます。手持ちの資源を活用する、損失を許容できる範囲で動く、与えられたものを活かす、人脈を育てる、自分がコントロール可能な中で全力を尽くす、という基本動作を徹底することを教えるものです。

 当たり前に思えることばかりですが、これらを意識して行動することで、偶然をコントロールできているという自己効力感が高まります。エフェクチュエーションの意義は、そこにあります。