生産性向上はまちづくりから(境港市)

 今年の中小企業白書のキーワードは、生産性、創業、事業承継、新事業展開、人手不足克服です。いずれも重要な政策課題です。特に生産性の高い創業を増やす必要性が強調されています。しかしここには注意が必要でしょう。生産性の高さは、企業の技術や努力だけで決まるわけではないからです。
 既存の生産性の研究では、規模の経済や稼働率の重要性が指摘されています。集積をつくることで規模の経済が働き、かつ稼働率が高まれば、自ずと生産性は高まります。そう考えれば、個々の創業を点として支援するよりも、面的な支援を行い、集積ができるように誘導していくことが政策サイドに求められるでしょう。
 例えば、鳥取県境港市は、山陰地方で最も労働生産性が高いことで知られていますが、これは人口密度が山陰で最も高く、漁業と水産加工業の集積ができているからです。カニとマグロの水揚げ高は日本一と言われます。当然、労働生産性も高くなるでしょう。ゲゲゲの鬼太郎などの妖怪キャラクターを配置した商店街や、日本経営品質大賞を受賞した介護サービス業もあり、子供やお年寄りにとっても魅力的なまちになっています。
 これからは集積のできるまちづくりを構想し、実行した地域が生産性を向上させ、人や企業を呼び込めるのだと多くの人に知っていただきたいと思います。