サービス業の生産性の議論は五里霧中

 GDP(国内総生産)の7割以上はサービス産業が生み出しているので、これからの日本の経済成長を実現するにはサービス産業の生産性を高めなければならない、と言われています(経済産業省「サービス産業の高付加価値化に関する研究会」報告書)。
 こうした提言を受けてサービス業の優良事例(ベストプラクティス)の情報提供や、人材育成(サービス業について学ぶ講座の整備等)が国主導で進められています。これは方向性としては正しいと思います。しかし結局のところ、個々の企業の経営力を高めることが最も重要という結論になりそうですので、政策としても、これまで行ってきた経営支援策以上の何をするのかが問われることになります。
 気をつけたいのは、産業の新陳代謝を促すという大義名分のもと、生産性の低い企業を廃業に追い込んでよいのかということです。日本は低生産性の企業を温存しているために産業の生産性が上がらないとよく指摘されます。しかしその結果、一定の雇用が維持されてきたという面がありますし、ゾンビ企業と呼ばれた企業が復活した例もあります。
 サービス業はアウトプットの定義が難しいために、生産性の計測が難しい。そのため、生産性が本当に低いのかは、実のところよくわかっていません。技術の向上により製造業が不要とした労働力を吸収してきた面がありますから、サービス業の労働生産性が低く見えるのも当然かもしれません。
 サービス業の労働生産性を高めた後、不要となった労働力をどうするのかについては誰も議論しません。労働生産性の向上が需要拡大に結び付いて雇用維持につながることが暗黙のうちに仮定されているのですが、人口減少時代の需要拡大とはどういうものなのか。明確にする必要があるでしょう。