起業支援に知識サポートが必要な理由

 日本再生戦略に盛り込まれた起業支援では、知識サポートを行うプラットフォームの構築が謳われています。弁護士、金融機関、税理士・公認会計士、起業経験者、事業承継経験者等が連携して、知識面から起業家をサポートしようとするものです。過去の支援策で不足していた点を補う意味があります。
 1990年代の終わりごろに、創業支援ブームがありました。1998年に新事業創出促進法が制定され、創業と創業者が初めて法的に定義され、創業者向けの信用保証制度が創設されたり、創業者向けの無担保無保証人融資制度(日本政策金融公庫新創業融資制度)が創設されました。全国に3類型の中小企業支援センター中小企業・ベンチャー総合支援センター都道府県等中小企業支援センター地域中小企業支援センター)が創設され相談サポートも開始されました。こうした流れの中で、1999年に政府の産業競争力会議が「国民的運動を通じた起業倍増計画」を提唱し、話題になりました。
 創業支援ブームの中で取られた一連の施策は、開業率を若干だけ上げましたが、起業を倍増させるには至りませんでした。この時の施策は資金サポート中心でしたが、それだけでは起業は活性化しなかったのです。
 今回の知識サポートは、過去の施策が資金サポートに偏っていたことの反省に基づいていると思います。起業には、税務申告、商品開発、販路開拓、人材確保・育成など、様々な知識が必要になります。これらが不十分であるために、起業したものの事業が続かないというケースが数多く見られました。そうした不足を補うために知識サポートが必要なのです。
 知識サポートの重要性は、日本最大の創業支援機関である日本政策金融公庫も以前から訴えています。同公庫の政策提言レポート『北海道元気ビジョン2−北海道を救う女性パワー』(2007年9月)では、女性の起業を活性化するには、キャリアサポート(経験と人脈をつくる場の整備)、ナレッジサポート(企業経営の知識を身につける場の整備)、コンセンサスサポート(地域がバックアップするという意識づくり)が必要としています。知識(ナレッジ)サポートが重要性であることは支援者の間では常識なのです。
 今回の施策は、小企業支援の専門機関の知見も反映した実効性のあるものといえるでしょう。