縮む時代にこそお笑いだよ!全員集合(by中島隆信)

 人口減少時代に突入し、経済成長が頭打ちとなり、実質賃金が低下し続ける今、学校でも職場でも人間関係がギスギスしています。人口や所得が縮小に向かう社会・経済では、人間関係のあり方も否応なしに厳しくなるのでしょう。だからこそ心の豊かさを大切にしなければならない、そのために「笑い」が必要だとの問題意識で慶応義塾大学商学部の教授が本を出されました。中島隆信教授の『「笑い」の解剖』(慶応義塾大学出版会)です。
 中島教授は、「笑い」が起こる仕組みについて四段階説(不自然さの認知、主体への親しみ、非当事者性、心の解放)という仮説を立て、それを実際にあった事例に当てはめて立証していきます。そのプロセスが50に及ぶ一問一答形式で語られています。
 中島教授は国民を豊かにする経済学を研究する学者です。しかし「笑い」は金銭的価値では表せません。それでも国民を豊かにするうえで必要不可欠なものであるとの認識から、あえて経済学を使わずに「笑い」の構造の解明にアプローチしています。身近な笑いから、落語、漫才、コント、モノマネまで実例を挙げて「笑い」はどのようにして生じるのかをとことん論じる姿勢は鬼気迫るものがあり、とても笑っている場合ではありません。
 これまでも『大相撲の経済学』『障害者の経済学』『オバサンの経済学』『お寺の経済学』『刑務所の経済学』『高校野球の経済学』など、経済学の限界に挑み続けてきた中島教授ですが、ついに「笑い」の研究にまで到達しました。
 縮小しながら充実していく『縮充の時代』には、「笑い」が大きな役割を果たすに違いないとのメッセージを教授から受け取りました。