石破大臣が推薦する地方創生小説(江府町)

 鳥取県西部の江府町に500年続く伝統の夏祭り「江尾十七夜」。なぜこれほど長く続いているかというと、そこに「江尾十七夜」を愛した領主と、その領主を慕った領民の堅い絆があったからです。その経緯を語り下ろした小説が6月28日に出版されました。松本薫『十七夜物語 天の蛍』(江府町観光協会)です。
 戦国時代、江尾城主の蜂塚氏は、徳政をもって領地を治め、領民から慕われていました。毎年8月17日(十七夜)には、領民たちと一緒になって相撲や踊りを楽しんでいました。しかし山陽の覇者毛利氏と山陰の覇者尼子氏の間にあり、どちらについてもその敵方から滅ぼされるという苦渋の立場にありました。領民の命を守るため、一時は毛利氏についたものの、結局、義に篤い蜂塚氏は尼子氏との信を取り、毛利氏から滅ぼされてしまいます。その温情あふれる領主を偲び、領民は「江尾十七夜」を長く続けてきたのです。
 こうしたいきさつを、踊り子と足軽の目線から描き出したのが『天の蛍』です。庶民の目から見た、為政者と地域住民との温かい関係。生き馬の目を抜く競争の厳しい時代にあっても、地域はこうあってほしいという願いが込められており、まさに地方創生小説と呼ぶ内容に仕上がっています。
 石破茂地方創生担当大臣の推薦文に「地域に対する誇りと愛着を喚起する」物語とあるように、地域に生きる人々に元気を与えてくれます。ぜひ多くの方にお読みいただきたいと思います。