日本再生戦略の中で、起業・創業という言葉が並立して使われています。どちらもよく使われる言葉であり、新しい事業を始めることを指しますが、明確な違いがないため、再生戦略の中でも同等に使われています。同じ意味なら統一した方がよいのでしょうが、使われ方に微妙な違いがあることから、なかなか統一されません。
創業は、中国の故事「創業守成」から来ています。唐の二代目皇帝太宗(在位626〜649年)の逸話が基になっており起源は古いです。老舗企業が「創業○○年」というように、昔から使われています。1998年に新事業創出促進法が制定された際、創業と創業者が初めて法律に定義され、以来、政策担当者を中心に広く使われるようになりました(ここでは創業後5年以内の者を創業者に含めていましたが、これは後に中小企業新事業活動促進法において新規中小企業者に改められました。現在では、創業者は創業を予定している者に限られています)。
起業は、日本経済新聞などマスコミが好んで使う表現です。自分で事業を起こすというニュアンスが良いのでしょう。リクルート社が月刊アントレを創刊した1997年頃から広がったように思います。起業家という言葉があるように、自立したイメージが強く感じられます。
創業・起業以外にも同様の言葉があります。日本政策金融公庫では新規開業という言葉を使っています。1970年頃から「小零細企業新規開業実態調査」などで使っていました。事業を始めるといえば独立開業が常識だった中で、より幅広く新しいことに挑戦する開業者が見られたことから、新規開業という言葉を使いました。
同公庫でも法律で定められた創業という表現を用いるようになり、用語の問題は創業と起業に収斂しつつあります。創業という言葉は客観的な響きがあり、起業という言葉は主観的な響きがあります。どちらもよい言葉ですので、ニュアンスを活かして使い分けてもよいのかもしれません。