ベビーフードで農家を応援する女性起業家の年輪経営

 化学合成した農薬や肥料を使わずに育てた本当においしい野菜を家庭に届けたい。そんな農家の想いをかなえるために、武村幸奈さんは2014年に学生でありながら(株)はたけのみかた(滋賀県湖南市)を立ち上げました。その会社は10年目となる今年、百貨店に商品を並べるまでに成長しました(日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』No.192P30-31「野菜のおいしさを赤ちゃんに」)。

 同社が取り扱う商品は、化学合成した農薬や肥料を使わない、地場の野菜を材料とした「manma 季節のベビーフード」です。幼児語の「まんま」と野菜の風味その「まんま」を意味しています。1食分70グラムで500円ですが、月に4万食売れます。おいしくて体に良い野菜を届けたいという農家と武村さんの想いが、消費者に伝わっています。

 ここに到るには苦労もありました。学生時代、地産地消を推進する活動に携わっていた武村さんは、育てた野菜に大きさや色の不揃いがあったために販売が思わしくない農家の課題を解決するために、ベビーフードを作って販売するビジネスを思いつきました。農家を一軒一軒周り、丁寧に説明を尽くしてようやく取引を開いてくれた先を大切にして、その伝手を伝い取引先農家を増やしていきました。そうしてできた契約農家は30件にまで増えました。

 ベビーフードは、試行錯誤を繰り返した末、使う野菜の種類を絞り込む「引き算の発想」で、野菜本来の味を伝えられるものが完成しました。オンライン販売からスタートして、メディアで取り上げられたことからスーパーにも販路が広がり、ついには百貨店にも商品が並ぶようになりました。

 身の丈に合った成長を心がけた同社は、年輪経営で着実に業績を伸ばし、地域に根づくことができました。「畑の味方」はこれからもおいしい野菜を届けていくことでしょう。