「自分の中の表現したい想いがあふれるほどになったときに、プロとして独立できる」フランスのClub des Croqueurs de Chocolatから五つ星の評価を受けたパティシエ、小山進さんの言葉です。小山ロールでロールケーキブームを作った小山さんと言った方がご存知の方も多いでしょう。日本を代表する菓子職人は何を考えてスイーツを作っているのか。それは、想いを伝えたいということでした(小山進著『丁寧を武器にする』祥伝社)。
小山さんは、海外での修行経験がありません。それでいながら世界最大のチョコレートの祭典SALON DU CHOCOLATにおいて最優秀ショコラティエ賞に選ばれました。受賞の際に「技術面、味、見た目の美しさも非常に優れていて、後味と余韻も素晴らしかった。ショコラの概要を説明した企画書のプレゼンテーションも抜きん出ており、審査員たちからも最高点を獲得していた」とのコメントをいただいたそうです。
受賞対象となった5品のショコラは、大徳寺納豆を載せたものや塩味を効かせたものを織り込みながら、日本の和を伝えるまとまりのあるストーリーになっていました。その説明書は、小山さんの意図が伝わるように、イラストや写真も入れて時間をかけて作成したそうです。スイーツづくりだけでなく、説明書づくりにも力を入れる。ここが他のパティシエと違うのでしょう。
「スイーツはおいしくて当たり前。大切なのは、そこに込めた想いをうまく伝えること」という小山さんの言葉は、モノづくりの本質を捉えていると伝わりました。