供給過剰時代の創業支援

 政府が14日、これからの成長戦略として「日本再興戦略」閣議決定しました。この中(P52)で、「中小企業・小規模事業者の革新」を進めるために「開業率が廃業率を上回る状態にし、開業率・廃業率が米国・英国レベル(10%台)になることを目指す」と掲げています。
 中小企業白書に掲載された最近の開業率は5.1%、廃業率が6.2%ですから「再興戦略」は開業率を2倍に引き上げることを目指しています。かつて、これと同様のプランがありました。2001年に発表された平沼プランです。「開業創業倍増プログラム」と銘打ち、年間の開業数を5年で倍の46万にすることを目指していました。しかし結果は、22万と逆に減ってしまいました。
 平沼プランが見逃していたのは、我が国が消費不足・供給過剰経済に変貌していたことです。供給過剰でデフレになっているのにさらに供給を増やそうとしても無理があります。今回の「日本再興戦略」は、その失敗を教訓にして、需要創造に力を入れるとともに、開業が増えれば廃業も増えるだろうが経済の新陳代謝を促すことが大切、結果的に開業率が廃業率を上回ればよいと、踏み込んだ認識を示している点が評価できます。
 景気を良くしたければプレーヤーである企業を増やすことが大切との認識は正論です。ただし、それには需要も伴わなければなりません。高齢者や女性を巻き込んで需要創造型の創業をどれだけ増やせるか。そこにこれからの創業支援の眼目があると思います。