小売業は小さく売る(静岡)

 シャッター通りと化した商店街にありながら独自の工夫で復活して「奇跡の果物店」と呼ばれる杉山フルーツ静岡県富士市)。経営者であるフルーツアーティストの杉山清さんは「小売とは小さな量を売る商売。たくさん売ろうとする戦略は間違っている」と言います(杉山清著『生ゼリーにきょうも行列ができる理由』セブン&アイ出版))。
 スケールメリットではなくスモールメリットが大事なのだというのが杉山さんの主張です。これは、時代の変化の中で苦しみながら経営改革に挑戦し、結果を出した商店主の一つの結論です。杉山さんは、どうすればお客様に納得していただけるかを考え続け、「どこにもないオリジナリティを追求すること」という答えに到達しました。そうして生まれたのが芸術作品とも言われる生ゼリー「水中果」です。
 百貨店やスーパーから「水中果」を扱わせてほしいという依頼や、テナント出店しないかという話が引きもきらないそうですが、杉山さんはお断りしています。東京スカイツリーからの出店の誘いも断りました。量販は、「どこにもないオリジナリティを追求する」という自身の経営哲学に反するからです。
 広げ過ぎた屏風は倒れる。お客様に末永く商品をご愛顧いただくには、小さく売ること。いつまでもお客様に「おいしかった」という幸福を届けたい。ぶれない経営哲学が「奇跡の果物店」を支える大きな柱となっています。