福祉の世界に経営を導入した「こうほうえん」(境港市)

 境港市介護施設こうほうえんが、2014年度の日本経営品質賞を受賞しました。受賞理由は、「社会福祉法人としての使命感とともに、互恵互助を職員の大半が日常の延長線上の当たり前として地域の暮らしに密着した貢献活動を通じて実践している」「職員の高い意識に支えられ、利用者とその家族の共感と感動を与えるサービス品質を生み出し、高レベルのQOLを実現している」「地域社会との互恵互助の信頼関係をもとにした地域包括ケアシステム構築を2025年の法人の姿として、県内各都市において地域包括ケアシステムの構築のモデルケースを目指した活動を行っている」ことです。
 こうほうえんは、福祉業界に経営の概念を初めて導入しました(井上邦彦『変わる勇気、変える勇気』生産性出版)。患者本位の視点に立ち、身体拘束ゼロ、オムツゼロ、ユニットケアへの移行を目標に掲げ、本当に実現しました。こうしたレベルの高いサービスを提供していることから、2010年には「ハイサービス日本300選」にも選ばれているのですが、これを可能にしているのは徹底した人材育成です。職員の仕事を定義してチェックリストで点数評価できるようにし、新入職員は1年で7点以上のレベル(10点満点)になることを求めます。新人にはコーチ役のエルダーがつき、マンツーマンで教育します。これにより新人の離職はほとんどなくなったそうです。
 お客様(利用者)を大切にするために、まず従業員を大切にする。経営の原点はここにあると思います。