IT化と豊かな自然が過疎化に歯止め(神山町)

 徳島県神山町は、スダチの生産量日本一を誇るまちですが、急速に進む過疎化に悩まされていました。人口は1970年の13,588人から2010年の6,042人へと半分以下に減り、まちの将来に危機感が漂っていました。
 まちを活性化しようと、我が国で最初にアダプト・プログラム(市民と行政による環境美化運動)を導入したり、国際交流協会を設立して国際交流に力を入れたりしていましたが、これだけでは、過疎化を止めることはできませんでした。
 転機となったのは、県が光回線網を整備したことで、豊かな自然の中に大都会並のIT環境が生まれたことです。これに目をつけたIT企業が、次々とサテライトオフィスをつくり出したのです。IT企業の事業展開は立地にほとんど左右されません。むしろ大自然の中で仕事をする方が生産性が高まると従業員に好評でした。生活費も安くすみますので、企業経営には願ったり叶ったりです。
 町外からの移住者が増えたことで、神山町の人口はこの3月現在で6,115人まで回復しました。IT化は田舎にこそ重要ではないかと考えさせられる話です(参考文献:篠原匡『神山プロジェクト』日経BP社、参考資料:神山町役場HP)。