『社長復活』(by板倉雄一郎)

 かつてベンチャー企業家として名をはせた板倉雄一郎さんの新刊『社長復活』(PHP研究所)では、挫折した起業家が再起を図るまでの14年にわたる苦闘の日々が描かれています。
 板倉さんは、1991年に電話会議システムを発展させたサービスを提供する(株)ハイパーネットを設立しました。そこで世界初のプッシュ型ダイレクト広告システムを利用した無料インターネット接続サービスを展開したことで「ニュービジネス大賞」と「通商産業大臣賞」を受賞しました。しかし急成長する会社に資金繰りが追い付かず、1997年に倒産してしまいました。
 倒産後は、『社長失格』を刊行し、企業コンサルタントや投資コンサルタントを行っていましたが、東日本大震災をきっかけに、自分も再度、事業を立ち上げたいと奮い立ち、2011年に(株)シナジードライブという社名でボイスリンクとイチモクというウェブサービスを開始しました。
 「ぼくには、どういうわけか、水道の蛇口をひねったかのように次々に事業アイデアが浮かび上がる。それをリスクを取って実現しないで、いったい何のための人生なのだ」という板倉さんは、何度も挫折を味わいながら立ち上がっていきます。日本にも、これほどのベンチャースピリットにあふれる起業家がいたのかと驚かされ、元気づけられます。
 日本人が失いかけているリスクを取る精神について教えてくれる、すばらしい著作だと思います。