視覚障害者にネイルすることで社会参加を進める女性起業家

 視覚障害者向けネイルという逆転の発想で新たなニーズを掘り起こすとともに、障害者の社会参加を進める女性起業家がいます。埼玉県上尾市Nail Le Brailleを経営する佐藤優子さんです(日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』No.165 P16-19「視覚障害者と社会をつなぐネイルサロン」)。

 佐藤さんは2018年に創業しましたが、当初は一般向けのネイルサロンとして営業していました。しかし競合の激しさから差別化を考えるようになり、介護施設を訪問して高齢者向けにネイルを行おうとしました。ところが提携予定の会社との契約が破談となりました。そこで新たに視覚障害者向けに出張ネイルを行おうと考え、2019年から始めました。

 始めてみてわかったのは、ネイルケアだけでなく、ネイルアートへのニーズが高いことでした。視覚障害者がネイルアートをしていると、それに気づいた周囲の人たちが声をかけてくれ、健常者の人々の輪に入るきっかけになりました。視覚障害者にとってネイルは社会に溶け込む道具になるのです。顧客となった方からはさらに要望があり、白杖にデコレーションするサービスも始めました。

 視覚障害者もおしゃれをしたい、周囲に溶け込みたいというニーズを掘り起こした佐藤さんのビジネスは、障害者の社会参加を進める点でSDGsの新たな取組みと言えるでしょう。こうしたすばらしい取組みが広がることを期待しています。