マンガを世界に届ける自動翻訳技術

 日本が誇るマンガのすばらしさを世界に広めるため、出版社やマンガのインターネット配信事業者向けに自動翻訳サービスを提供する企業があります。東京大学でAIによる機械翻訳を研究して博士号を取得した石渡祥之佑社長が2020年に創業したMantra(株)です。同社の目標は「テクノロジーで言葉の壁をなくし、マンガに関わる世界中の人を幸せにすること」です(日本政策金融公庫調査月報No.164 P16-19「翻訳技術でマンガを世界に届ける」)

 マンガの中の日本語を英語や中国語に翻訳するには、対象となるマンガ独特の言葉のニュアンスを正しく伝える翻訳が必要です。同社は、独自のマンガAI技術群を組み合わせて、マンガに特化した機械翻訳エンジンを構築したことで、高精度でスピーディな翻訳を可能にしました。これにより、従来行われていた人の手による翻訳の半分の時間とコストで自動翻訳が行えるようになりました。今では、1ヵ月あたり100冊分の翻訳に同社のシステムが利用されています。

 同社のシステムによる公式版の翻訳が出回るにつれ、海賊版が取下げられるようになっており、マンガ市場の健全化にも貢献しています。

 日本のマンガを世界に広げるスタートアップ企業の活躍は、日本のDX化を推し進める力になるのではと期待が高まる話です。