『ホモ・デウス』が示す小企業経営の秘訣

 ビル・ゲイツなど世界の著名人が絶賛する『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社)では、飢餓・疫病・戦争を克服した人類は不死・至福・神性を目指すと指摘し、人類の進化の行く末を考察しています。この中で小企業経営に役立つ重要な指摘があります。それは、人類が協力体制を築くことで未曾有の発展を遂げてきたということです。
 バラバラに生きていた人類が、協力体制である家族を作り、村を作り、国を作ることで他の生物にはできなかった大繁殖が可能になったという知見は、小企業にも大きな示唆を与えてくれます。小企業経営にも連携が重要だからです。
 小企業は個別に活動している限りでは、非力な存在です。しかし、連携すればとてつもなく強くなります。
 主婦起業家である北極しろくま堂(有)園田正世さん(静岡市)は、スリング(抱っこひも)のネット販売を成功させるために、多くの人と連携しました。米国から個人輸入仕入れたスリングをPRするチラシは、友人のデザイナーに作ってもらいました。ホームページを作成する際には、知り合いのパソコン教室の先生から作り方を学びました。米国のメーカーとの交渉では、英語が得意なママ友にメール文を作ってもらいました。知的財産権侵害だというクレームへの対応や、メーカーとの契約の見直しには、特許事務所の弁理士にアドバイスをもらいました。一人の主婦が多くのプロフェッショナルと連携したことで、ネットビジネスを成功させることができました(園田正世ママ起業 私の方法祥伝社)。
 カリスマ起業支援家の小出宗昭氏は「小企業は、セールスポイントを明確にして、ターゲットを絞り、連携することが大事」と日頃から主張されていますが、『ホモ・デウス』も連携の重要性を指摘しているというのは、驚くべきシンクロニシティと言えるかもしれません。